2013年06月29日
樹脂の収縮率について (ポリエステル/エポキシ樹脂、各種実験)

今回も、マニアック・ネタ!
‥ いろいろな工作をする中で、各種の樹脂は、とっても便利な素材です。
工作用の樹脂は、材料の時点では、一般的にハチミツのような少しトロッとした液体。
これに硬化剤を混ぜると化学反応して、固まってプラスチックになります。
つまり、液体から、頑丈な板状のパーツ(FRP)や、ちょっとした小物を造形できる、不思議なアイテムなんです。
僕がよく使用するのは、不飽和ポリエステル樹脂。
これを使って、小さなアクセサリーや、カヌーなどの大型製品も、個人で作ることが可能です。
⇒ 「レジン」の代用に! 不飽和ポリエステル樹脂の まとめ。:作る人 (つくるんちゅ)日記
しかしながら、樹脂を使った造形には、一つ重大な問題が有ります。
それは、素材が硬化する際に、どうしても「収縮」が発生するという点。

変形しない型枠だったとしても、流し込んだ樹脂が、型のサイズよりも収縮することにより、型から剥がれながら、内部で変形していく事も‥。
このリスクは、どうにか出来ないものか‥?
考えていてもしょうが無いので、基礎実験をしてみました。
FRP樹脂の一般的な収縮率とは?

いったん、同じ長さに切り揃え、条件を同じにして使用しています。
⇒ アクリルパイプをキレイに並行カットする方法 (切断&切削)
パイプ内部は離型剤をスプレーして滑りを良くし、片方は木ネジで固定することで、長辺方向での樹脂の収縮率を調査してみます。
まずは、普通に1%の硬化剤を混ぜた、FRP用透明ポリエステル樹脂を流し込んでみます。
硬化後に計測すると、目測で約2mmちょいの収縮でした。
って事は、100mm:98mm。約2%の収縮率ということが判明しました。
これをスタンダードとして、条件を変えて、いろいろ実験して行きましょう。

▲左から、滑り止め砂/5号珪砂/砕いた樹脂を混ぜたもの/硬化剤3%/硬化剤1%/型枠用高精度樹脂/タルク混入/注型用樹脂/エポキシ樹脂。
◆硬化剤が多い場合

というのは、以前から感じていた疑問。
もしかして、硬化剤を多くすると、収縮率が変わるんじゃないのか?
良い機会なので、試してみました。
硬化剤を3%にした場合、やはり収縮率が激しくなっていました。
目測で、約4mm。(収縮率:4%)
妙に納得してしまいました。 なるほどー!
基本的な傾向が判ったので、ここからは、できるだけ収縮を減らすための方法を模索します。
参考記事 ⇒ 硬化剤 …その一滴の重さ:作る人 (つくるんちゅ)日記
◆すでに固まった樹脂を砕いて混ぜてみる

余った樹脂や、失敗した作品の残骸も利用できるので、今回の実験の本命です。
(実際、シリコンによる型取りなどで、こういった手法はよく使われます)
結果は、収縮率1%以下。 良い感じかな。
◆滑り止め用の珪砂を混ぜてみる
上記のように、同じ材質の樹脂を砕くのは、固まりかけで潰したり,ミキサーで粉砕したり、手間や時間やコストがかかります。
ならば、珪砂(ケイサ、砂)を混ぜたら、楽で簡単では?
塗装の世界には、滑り止め用に、塗料に混ぜる用の砂が売られています。
ショップで購入した、塗料メーカー指定の細かい砂を混入。
結果、こっ、これは! 0.5%以下の収縮率という、すごい高精度。
◆安い砂ではどうか?

う~ん。 精度が悪すぎて収縮率が計れませんが‥。 見た感じ、これもほとんど収縮はしてないようです。
◆タルクを混ぜてみる。

これを使った場合の収縮率はどうなのか?
意外や、1%の硬化剤で、3%程度の収縮。 樹脂単体より、悪いかも‥。
しかも粘りが強く、流し込みにくいので、使いずらかったです。
◆高精度/注型専用の樹脂について

言いにくいですが、どっちも2%程度の収縮は見越しておいた方が良さそうです。
ただ経験上、ホームセンターの樹脂や、あまりに安い通販の樹脂は、硬化時に収縮以外にネジレが発生するなど、寸法安定性に欠けるきらいが有ります。 高価な樹脂は混ざりやすさや均一性、温度特性など、今回の実験には出にくい、品質の差が存在するのかなぁと思います。
◆エポキシ樹脂について。

今回は1:1タイプの樹脂と硬化剤を混ぜて、流し込んでの実験。
結果は、意外や意外‥、かなり縮んでしまいました。
目測、3%程度かな‥。 んーっ!
結論
前提として、このレポートを鵜呑みにせず、まずは各自で再試験してみて下さい。
(差異や発見が有ったら、コメント欄にどうぞ!)
僕のささやかな実験によると、硬化剤は、できるだけ少なめ(実用範囲内で硬化するギリギリの量)、必要に応じて適切な混ぜ物をすることで、完成品の寸法安定度を上げる事が可能なようです。
(砂なんかを混ぜると、当然、単位面積あたりの強度は落ちます。チョップドストランドを併用するなど、対策が必要)
今回は樹脂の収縮に限って話を進めてみましたが、型枠の形状や表面処理、流し込みの順序・量を微妙に調節する事で、製品精度を上げる方法はイロイロと有るようです。
というわけで、自分の作品の精度を高めようと思ったら、様々な工夫の余地が有ると言うこと。
一般的に知られていて、マニュアル化されている手法の他に、職人ごとに、いろいろと別な視点や手段、ノウハウも存在します。
つまり、同じ素材(インプット)を使っても、作品(アウトプット)は、まるで全然、違うんですねー!
工作って、実に奥が深いです!
ちなみに、今回のレポートの予備実験の後、収縮による寸法精度の問題をクリアして、中空の看板文字の量産に成功しました。 (主なノウハウは、混ぜ物以外の方法です‥ )


LEDを内蔵し、夜間は光る、オリジナルの看板文字です。 これはまた、改めてレポートしますね。
この記事へのコメント
初めまして。
「ランプシェードをレジン液(エポキシ樹脂)で、ステンドグラス風に作れないかな?」と模索している内に、作るんちゅサンの記事に出会えました。
少し心配なのは、他の記事で
「エポキシ樹脂は、温度が40度になると変形する、柔なってしまう」
との事を書かれているのを読んだことでした。
しかし、スナック等の看板の素材は、見た感じ………(´・ε・`)ムムム
と、悩んでいたのでした。
制作にあたり、歪が生じる事などが参考になり勉強になりました。
ありがとうございましたヽ(*´∀`)ノ
「ランプシェードをレジン液(エポキシ樹脂)で、ステンドグラス風に作れないかな?」と模索している内に、作るんちゅサンの記事に出会えました。
少し心配なのは、他の記事で
「エポキシ樹脂は、温度が40度になると変形する、柔なってしまう」
との事を書かれているのを読んだことでした。
しかし、スナック等の看板の素材は、見た感じ………(´・ε・`)ムムム
と、悩んでいたのでした。
制作にあたり、歪が生じる事などが参考になり勉強になりました。
ありがとうございましたヽ(*´∀`)ノ
Posted by たみたん at 2017年07月07日 14:30
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