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2009年08月09日

怪談!? ヤドカリの帰巣本能

友達と昔話をしていて、ふと思い出した記憶。

僕は5年ほど各地を放浪して、沖縄の果ての西表(いりおもて)島にも、長い年月、滞在していた。 
島に唯一の製糖工場に、3年(シーズン)ほど、住み込みで勤務。

毎年、製糖シーズンが終わる4月から数ヶ月は、海岸でキャンプ生活。

ここでは、毎日が発見の連続。
▲僕のキャンプの様子。完全に住居と化している。

例えば、ある日、オカヤドカリ(サザエの殻に入ったでかいヤツ)は、お茶の出がらしが大好きという事を発見した。

テント裏の林に捨てておくと、たくさんやってくる。
(生水を飲むと腹をこわすので、お茶を湧かして飲んでた)
▲オカヤドカリ。天然記念物なので、逃がしてあげること。

…ある時、ふと、思いついたイタズラ。
数十匹のヤドカリの殻に針金で鈴を縛り付け、数百メートル離れた、友達のテントの回りに放してみる。

きっと、夜中にちり~ん、ちり~んと鳴って、怖いハズ。
(今思うと、これって無差別・心霊テロ行為ですねー ‥)

翌日、さりげなく、何か変わったことが無いか聞いてみたけど、特に無いという。…おかしいな?


何か変わったことは、僕のまわりで起こり始めた。
それから毎晩、僕のテントのまわりでちり~ん、ちり~んと鈴が鳴る。
しかも、夜な夜な、その数はどんどん増えていく。

まだ、魑魅魍魎(ちみもうりょう)という言葉が生きている西表島。
当時、僕が住んでいたのは、霊感が強い人は、近づきたがらない南風見田(はえみだ)の浜の奥。

…そんな環境の中、真っ暗な林の中のテントで一人寝ていて、夜中に鈴の音で目が覚めると、心の底からゾッとする。

恐怖! でも自業自得…!?



まぁ、そういうわけで…、誰も知らないと思うけど、これはヤドカリに帰巣本能があるという大発見。
(自分のアホっぽさも再発見した…)


他にも、発見はたくさんある。
・小さなヤドカリは、ツナ缶の油が大好き。これは釣り餌を集めるのに便利。
・殻の中に閉じこもったヤドカリは、熱い吐息を吹きかけると、すぐに出てくる。
・ヤシガニの味噌は最高にうまい。でも、中のくるくるしたヒモみたいな腸を食うと当たる。
・産卵期のウミガメは何度も下見をする。(産まずに帰る事が多い)
etc…

以上、まったく役に立たない発見と、レアな豆知識でした。


 



2009年08月11日

怪談3!? 石敢當の威力…


あなた、見えているでしょ。
知り合った霊感のある人は、僕をそう決めつける。何かを感じるのだろうか。


でも、僕はこれまで、異世界の何かを見た事はない。
霊感がある人の体験談を聞くと、見えなくて良かったと、心底思う。


ただ、時々、何かの気配を感じる事は多々ある。

例えば、両親が亡くなった時刻、それぞれ遠くの場所で、あぁ…と、分かって力が抜けたっけ…。


…今回は、マジメな話。

僕が西表島でキャンプしていて感じた、ヤバイ雰囲気の話だ。


前にも書いたけど、僕は5年間、毎年11月~12月&4~6月、だいたい製糖期をまたいで、合計5ヶ月くらいは西表島で長期キャンプをしていた。(製糖期もテントは張りっぱなし)

海岸の林の中にブルーシートで屋根を張って、テーブルや棚を作って生活できる空間を作りだす。

中には何年も住み続けている強者もいて、彼らは実に巧みにアジトを作る。
それに比べると、僕のは、かなりシンプルな方だ。
▲僕のアジトの様子。中央には流しも見える。

ただ、ラッキーな事に、僕が足かけ三年、アジトにしていた場所は、裏に小さな滝があり、キレイな水が手に入った。

ここから竹の樋(とい)で水を引き、流しを作ったり、ビールを冷やしていた。
途中のヤブも開墾して、ドラム缶風呂も設置。
女子は無条件。男は薪と引き替えに、入らせていた。
ドラム缶に6割くらいのお湯を沸かすのに、冬でも長さ40センチ、太さ10センチ程度の薪2本あればいい。

このジャングル風呂は、実に最高だった。
入りに来た友人も、よく「ヒャッホー!! 」とか叫んでいたっけ。


アジトには、トイレも作った。

最初は、アジト近くの川のような地形の砂場にシャベルで小さな穴を掘って、用が終わったら砂で埋める方法を取っていた。
同じ場所を掘らないよう、小枝を差して目印にしておく。
小枝が何列か出来る頃、嵐が来て、その場所は川と化し、全てが海に流れるという寸法だ。

あまりに原始的なのと、中途半端な嵐もヤバイので、アジトの裏を開墾して、常設トイレを作った。
これで、ほんの少し近代化。深い穴を掘って、2枚の足板を渡した作り。終わったら砂をかければ結構長く使える。

が、このトイレを作ってから、何か異様な気配を感じるようになった。

トイレへの行き帰り、道の途中の三叉路で、何かヒソヒソと相談するような雰囲気を感じるんだ。そこだけシ~ンとしていて、なおかつ、咎(とが)めるような冷たい気配がする。


何かがヤバイ。

何度通っても、確かに気配がする。それは僕を責める雰囲気だ。


ワケが分からないが、とにかく考える中で、ふと気がついた。

…突然、思い当たった事。
それは、水場とクソ場を、道でつないでしまった! という事実。

これはヤバイ!!


水場は本来、神聖な場所。
それとトイレを、一直線につないでしまったので、怒りを買ったに違いない。

慌てて、その日のうちに工事開始。
新しく小道を造り、最初の道があった場所はクワズ芋や適当な木を植えて、無かったことにする。

まだ何かモヤモヤしているので、石敢當を設置。

石敢當とは、沖縄の魔除けで、文字自体に霊力があると言われている。

ならば、心をしっかり込めて書けば、マジックでも効くハズ。

そう思って、重そうな石を探し、神聖な気持ちで表面に書いた…。「石敢當」と。

問題の場所周辺をお酒で清めて、心の中で謝ってから、その石を設置。

それで、ぱったり、気配が無くなった。
特に怪我もなく、今に至っている事を考えると、どうやら許して貰えたらしい。


もちろん、霊感の無い僕の体験なので、全ては気のせいかもしれない。
でも、自然の中で暮らしていると、五感が研ぎ澄まされて行くので、けっしてそれだけではないと信じている。

今の車にも、フロントガラスの所にごく小さな木製の石敢當を置いている。
設置してから、事故は一度も無い。



ちなみに、西表島では、他にもいろいろ怖い体験はあった。

浜の住民たち(僕のようなキャンプ生活者)の間で知られていたのが、午前3時の怪。

ある時、誰かが夜中に怖くて目が覚めた。と言い出すと、皆が同じ体験をしている事が判明。
どうやら、南風見田からぼら浜(西側)に向けて、深夜に何かが通り過ぎて行くみたい。
証言を照らし合わせると、起きる時間が場所ごとにだんだんズレて行ってるんだ。(3時~4時前)
起きて、外を見ると、緑の光が見えたという人もいた。
原因は判らないけど、やっぱり何かが通っていたんだろうな。



というわけで、まだいくつもネタはあるけど、この辺で。

物足りない人には、以下のサイトなんかお勧めです。
http://gnosis.blog64.fc2.com/


 



2009年10月10日

ダンパチ(床屋)

今日、ダンパチしてきた

沖縄では、床屋の事をダンパチ屋と呼ぶ。(断髪から来ているのかな)
料金はとても安く、シャンプー髭剃り無しなら、だいたい1,000円位が相場。最近では700円の看板もある。
てきぱきと素早い仕上がりだ。
▲風呂上がりの一枚

昔、旅をしている頃、とても上手にカットしてくれた理容師がいて、「この髪型は他の店で、どう伝えたらいいの? 」と聞き出して以来、ずっと同じ髪型。で、今回もちゃんと、いつもどおり。

一時期、髪の量がやばくなった時もあったけど、情報を集めて格安で乗り切った。
ヒントは個人輸入、5%、ジェネリック。 …例によって、正解のコメントは削除します(笑)。
(コスト:月額、1,000円以下。ちなみに、TVで宣伝してる大手は、年額40万とか…)

ちなみに、発毛系の薬品は頭皮を堅くするので長期の使用は難しいみたいですが、沖縄特産の抗酸化剤、EM-Xを3割ほど混入すると、防げるようです。(10年使ったけど大丈夫! )
                ※↑何気に、濃い情報ですよー。

沖縄の人は割と髪が豊富だけど、僕らナイチャーは要注意。
清潔と、早めの正しいケアが大切です。



さて、「旅」で思い出した昔話。

僕の場合は、1カ所に数ヶ月は滞在するタイプの旅で、みんなと仲良くなった頃、次の旅に出かけていた。…北海道、沖縄、インド、ネパール、タイ、ベトナム、etc…。

で、僕の持ち物の一つに欠かせなかったのが、バリカンやハサミ等の床屋セット。
自分で自分の髪は切れないけど、実は秘策があったんだ。

キャンプ場や、住み込みの寮とかで、女子にさりげなく「美容師って格好いいよねー。カリスマのほら、○○って~」とか振って、乗ってきたら「冗談でいいからカットしてみない? 」と落とす。

練習台はいっぱいいるし(女子が髪を切ってくれるというと、むさい男が順番待ち状態)。
で、あれこれアドバイスしながらカットを覚えて貰って、後で、ちゃっかり自分も散髪してもらう。というわけ。

かくして、スッキリした男達は嬉しいし、女の子も1つの特技を覚えてハッピー。…みんなが幸せだ。(最初の数人を除く)

キャンプ場には、こざっぱりとした僕と同じ髪型の男があふれ、妙な違和感はあったけど、汚い長髪軍団よりはいいでしょ。

この秘策は、4~5回は使ったかな。


海外では、その国の見聞のため、地元の店でカットしていた。

ある時、インドの道ばたで髭を剃って貰いながら、周りの人がまったく関心を示さず、通り過ぎて行くのを見ながら、ちょっとこの国に長く居すぎたかな? と思ったことも…。

今だったら、カミソリは敬遠だけど(エイズが心配)、当時は何も考えてなかったっけ。

旅の話しは尽きないけど、今日はこの辺で…。


 



2009年12月19日

悲劇! 当て馬の意味 (長文)

年末の大掃除をしていたら、懐かしい写真が出てきました。

北海道の静内(しずない)。
友人のいた牧場に居候していた時の写真です。

写真って、見た瞬間に、タイムスリップのように記憶がよみがえって来ますね…。

と、いうわけで、またまた僕の昔話。

この頃の僕は、自作のキャンピングカーに住んで、各地を旅しながら、暮らしていました。
が、突然エンジンが壊れて、モーターホームならぬモーターレス・ホームレスになってしまったのです(泣)。

仲間に、「同情するなら金をくれ」と、当時ドラマで流行っていたセリフを言ってみたものの、旅人たちは誰もテレビを見ないので話が通じず、マジに受け取られて、さらに落ち込んだり…。(僕は車で「家無き子」を見ていたので…)

何とか、エンジンを積み替えてくれる業者を見つけ、車の修理が終わるまでの間、北海道・静内の友人の所に居候していました。
ガタガタ音がして、すきま風の入る木造の古い部屋で、晩秋の暗い空を眺めながら「この先、どうなるんだろう」と、ふと不安になったっけ…。


そこは繁殖牧場だったので、メス馬や子馬がたくさんいました。

静内にはそういった牧場が多くて、競走馬の多くも、そこから巣立っていくと聞いた覚えがあります。

子馬は普通、なかなか触れる機会が無いと思うけど、ホントに可愛い生き物です。
(時々、こっそり厩舎に忍び込んでは、手を舐めさせたり、なでなでしてました。)

で、当て馬の話。

血統の良いメス馬たちが暮らす立派な厩舎とは別に、吹きっさらしの柵で囲われた一角に、汚い馬がいました。
何故か一頭だけで、とても気が荒く、常に蹄で地面を蹴ったり、いなないたり、イライラが伝わってくるような態度の、可愛くない馬でした。

牧場の友人に聞くと、「それは当て馬」だよ。との事。


ん? 当て馬って、コトワザじゃないの? と聞く僕に、彼が丁寧に説明してくれたところによると…。

繁殖牧場はメス馬ばかりだけど、それだけでは発情しにくいので、やはり身近にオス馬が必要なのだそうです。

しかし、血統の良いメス馬には、優秀なオス馬をあてがう必要があって、大金を出して種付け用に連れてくるのだと言う。
となると、牧場にいる身近なオス馬は…。


一見彼は、近くにたくさんのメス馬がいるハーレム状態。

盛んに自分をアピールして、オスの匂いをさせ、メス馬がその気になって、盛り上がって来て、いざってところで、彼の役目は終了です!
突然、毛並みの良いタネ馬が颯爽と現れ、目の前で…。

これは悔しい。(男として、辛すぎる)

ストレスであちこち禿げて、たてがみも絡んでアフロになり、性格もすさんで、ますます粗雑に扱われ…。
それでも、あきらめきれず、何度もメス馬にアピールを繰り返しては…。

そう、これが「当て馬」の真実です。


血統や成績の良い馬と、そうでない馬の、この違い。
もしかしてそれは、そのまま人間社会の縮図なのかも…。

と、当時モーターホームレスで居候の身の僕は、悲しげに考えたものです。


 



2009年12月21日

なんと100円! 電気ストーブ!!

いやー、昔の写真って、ネタの宝庫です。僕の場合。
年末の大掃除で見つけた、たくさんの写真群から、今回は、前に作った作品のご紹介。


題して「100円ストーブ」です!


沖縄は冬でも暖かいイメージがあり、実際に冬でも平均気温は15℃を下回る事はありません。
参考サイト → 沖縄の気候

が、寒いのです!
住んでみると判りますが、室内にいても、なんだか暖まらない、この不思議。

原因は、建物の造りのせい。
長くて暑い夏を乗り切るために、普通の沖縄の建物は通気性が良く造られています。
そのため、例えば暖房の整った北国などに較べると、隙間だらけで、至る所から寒気が忍び込んできます。


それは、沖縄本島より、はるか南の西表島でも同じ事。
3年ほど、そこで冬を過ごしましたが、冬場は寒くて、縮こまってました。

で、思いついたのが、何故かガラクタ箱にあった、100円の「ニクロム線」(300W)。
※ニクロム線:電熱線とも言う。電気を熱に変える装置。電気ストーブや電気コンロの熱源。

こいつを使って、電気ストーブを作っちゃおう!!

注:100Vの電源で発熱体を扱う工作です。発火・感電等の恐れもありますので、十分なスキルがある人以外は行わないで下さいね。

さっそく、材料集め。
当時、僕は西表製糖工場で働いていたので、工場の中を漁って、太い番線(針金)を拾いました。錆びてるし、使っても大丈夫でしょう。
あと、ゴミ捨て場から、一斗缶をゲット。(って、みんなゴミじゃん 笑)

これで、イメージが固まりました!


一斗缶のコーナー部分、角の鉄板を切り出して、反射板を作ります。
真ん中に番線を通して、そこに「ユニバーサル基板」(電子工作用。絶縁体に碁盤状の穴が開いている)を針金で縛り、そこから同じく針金のアームを伸ばします。

後は、番線を曲げて足を突け、ニクロム線を巡らせたら、完成!

一応、300Wの電気ストーブです。


笑っちゃいますが、当時、本気で作った、実用品。
ちゃんと、暖かいのです!

レビューを書きたい所ですが…。
速攻で、女の子に取られてしまったので、コメント無しで、ご勘弁を…。




PS:後日、「100円オーブン」も作りました!

 


 



2009年12月22日

これも100円! 電気オーブン

昨日の100円電気ストーブに引き続き、年末の大掃除で見つけた写真から、今回は「電気オーブン」のご紹介です。

今は判りませんが、秘境・西表島の、僕がいた集落には、当時、ベーカリー(パン屋さん)はありませんでした。
ていうか、集落に一つしか無い共同売店が、生活物資の購入先の全てです。


住んでいた工場の寮には、女の子たちもいましたが、いろいろと食べ物に不満を持っていたようです。

ある時、100円電気ストーブを見た女の子から、オーブンを作れないか相談を受けました。
で、彼女のリクエストで作ったのが、写真のオーブンです。

注:100Vの電源で発熱体を扱う工作です。発火・感電等の恐れもありますので、十分なスキルがある人以外は行わないで下さいね。

構造は、電気ストーブとほとんど一緒。
寮の厨房の裏で拾った、4リットルのサラダオイルの缶がベース。

サイド部分を切り取って、別の缶から切り出した鉄板で開け閉めできるフタと、中の皿を作ります。
上下にニクロム線を配し、足を付けたら完成です! 



チープな作りですが、僕だってお金と材料があれば、いくらでも立派な物が作れます。
秘境と言われる西表島で、何もない中で作った価値があるから、紹介しているわけで…。
(でも、チープだなぁ 笑)

ちなみに、これで焼いたパンの写真が、これ↓。 ホントに焼けたんですねぇ。
お礼のお裾分けは、とても美味しかったです。



予想もしてなかった、成果の報酬!
あぁ、まさに、都会の味。

…理解できないと思うけど、僕もあの感動は、伝えきれないんです…。


 



2010年03月05日

単位の話 「 イクラ算 」



あらゆる数字には、「 単位 」があります。 逆に、単位が無いと、数字は意味を持ちません。

?? いきなりそんなことを言っても、意味が解らないですよね。


でも、1円、2円。 1枚、2枚。 一皿、二皿。 一滴、二滴。 1桁、2桁。 1キロ、2キロ。 一本、二本。
…こうして書くと、何かイメージが浮かびませんか?


そう、数字が意味を持つためには、「その数字が何なのか」を示す「 単位 」が必要なんですね。


例えば、「俺、68!」と言われても、ウエストの話なのか、体重なのか、年齢なのか、順位なのか、イミフです! (こういう人、よくいますね 笑)


日本は特に単位の豊富な国です。
インドネシアに長期滞在していたとき、現地の人に日本語を教えていて、気が付きました。

彼らは、何で日本だと、物が違えば単位が違うのか、理解が難しかったのです。
でも、「一日10の日本語を覚えれば、1年で3~400の言葉を話せる」そう言って毎日真剣でした。

そこで、僕はこう言いました。

「子供が使う言葉だけど、ひとつ、ふたつが何にでも使えるよ。魚がひとつ。靴がふたつ。棒がみっつ。でも、彼女はひとつだけネ。(笑)」





さて、本題。「イクラ算」の話。 …これは、僕の作った単位です。

北海道の、某漁協に住み込みで働いていたときの話。
ここでの僕は、鮭の卵を手で揉みほぐしてバラバラにし、市販の「イクラ」の状態に加工する工程全般を手伝っていました。

1~2年目は、その「イクラ揉み」。3年目は「フォークリフト」。4年目になると「イクラの選別」という大役を任されていました。(てか、バイトなんですけどー)

くだらない事を考えるのが大好きな僕は、ふと思いました。
イクラって、一匹から何個取れるんだろう…?

さすがに数えているヒマは無いので、漁師や職員に聞いてみました。
だいたい、一匹の鮭が、3000粒くらいの卵を産むそうです。

はっ! という事は、「1鮭=3000イクラ」という式が成り立ちます。

それは「2なまこ=3000イクラ」とも言い換えられます。 (卵の固まりのハラコの事を、北海道では「なまこ」と呼んでいました。一匹に左右2本あります)

ここで、「1鮭=2なまこ=3000イクラ」という公式が証明され、そこから「イクラ算」が開発されたのです。


例えば、鮭を入れるタンクは、だいたい1トンの容量ですが、ここに鮭が400匹ほど入ります。
すると「1タンク=400鮭=120万イクラ」という解が導けますね。

こうして、一日に入荷する鮭の数から処理速度を計測し、最終的には秒速○○イクラまでを算出するに至ったわけ。


この「イクラ算」を広めると、男子チームはすぐに概念を理解してくれました。(女子は…。)

4年目の僕はイクラの選別係(正確には、ハラコ)でしたが、さらに鮭の搬入速度を調節しながら、鮭を捌いて卵を取り出す班と、イクラを揉む班との人数を調整する役割も任されていました。

で、「おーい、4人、捌くの止めて揉みに回れー!」等と指示を出して調整しながら、今、時速4000鮭で処理している。あと残り20タンクだから、2時間で終わるゾ。頑張れ! などとハッパを掛けながら、みんなを動かしていたのです。(指図は苦手な僕ですが、仕事ですから)
疲れでハイテンションになったみんなは、「うぉ~! 俺のMAX秒速3000イクラァー!」とか叫びながら、働いていましたっけ(笑)。
注:いくら揉み、現在は機械化されているようです。

こうして北海道で開発された「イクラ算」が、その後どうなったのか…。

今は沖縄に住むようになった僕に、知るよしもありません…。
願わくば、どこかで誰かの役に立ってくれてれば、いいのですが (注:まったく役に立ってないハズ 笑)。


ちなみに、イクラは、鮭の捕れた場所、魚の成長具合、鮮度等で厳密に管理され、僕の段階でも数等級に選別していました。

なにより大切なのは、鮮度です。
新鮮ななまこ(ハラコ)は、テニスのガットのような糸を張ったテーブルに手で擦りつけてほぐしても、中のイクラはつぶれません。
新鮮な卵を、とにかく最速で処理するのが、鉄則。

その後で、飽和食塩水等で処理して味付けすると、保存のきく製品になります。


裏の事情はあまり書けませんが、イクラに関しては、安い製品はそれなりって事です。

あと、スーパーで筋子を買ってほぐしても、本来の味とはまったく違うシロモノなので、注意。
おいしいイクラを食べたかったら、冷凍でもいいですから(出荷時、ほぼ全てが冷凍)、国産で相場以上の値段の品を求めましょう。


最後に一応、お約束。4年間(シーズン)勤めた僕が言うので、本当です。
「イクラは、いくら食べても飽きないです…」

特に醤油漬け。最高っすよー。