手作りカヌーの作り方 材木編(笑)-3

IGU

2010年08月08日 23:58

アパートを引き払って、5年ほど放浪生活をしていた旅人時代。

当時、西表島の海岸に住んでいた僕は、ふと出かけた石垣島のホームセンターで 「 材木カヌー 」 という、とんでもないアイデアを思い付いてしまった。…と言うのが、材木カヌーの第一話
そして、実際に海岸でカヌーを造ってしまった。というお話しが、材木カヌー・第2話

…以上が、前回までのあらすじ。


ここで、僕の作った「材木カヌー」を、写真で見てみましょう。

一見、本物のカヌーのようですが、中身は冗談に近いシロモノ。
でも意外な事に、実際に海で遊べてしまった、思った以上に実用的なおもちゃです…。

注:今回のお話しは、僕は昔、こんなおバカな事をやってしまった‥。と、あえて笑い話風の構成にしています。
素人手作りの船を奨励するものではありませんし、海をなめる事は大変に危険です。
このネタは、参考にしても、決して真似しないでくださいね!



▲船首側から見たところ。持ち手や、ロープ等の艤装もしてあります。



▲材木フレームの構造。上からトラックの幌を被せ、ファルトボートの仕組みを踏襲しています。

▲後ろから見たところ。船尾には、裏返して水を抜くための穴が複数開けられています。
今回は、この船が、初めて海に浮かんだ日のレポートから…。


材木カヌー、完成!!


いよいよ完成したカヌーをみんなに披露。

シャンパンは無かったけど、一番年長の旅人オジィが一升瓶の泡盛をカヌーと海に注ぎ、なにやら呟いています。

この、ウソくさくも、もっともらしい雰囲気、悪くないなぁ。 オジィも役者やのう。
…そんな事を考えていましたが、今日の主役は、僕。

みんなが見守る中、そっと船を押して乗り込み、海に出て行きます。
ひと漕ぎ、ふた漕ぎ…。ちゃんと、すーっと進みます。面白い!


▲スキャン画像なのでボケていますが、写真の僕は嬉しそうです!

他の、カヌーを持っているキャンパーたちも、それぞれの艇を出して、交換しながら乗り較べ大会が始まりました。

…と、数日前まで、指をくわえて見知らぬ他人のカヌーを羨んでいた自分が、何だかウソのよう。

普通に冗談を言いながら、それぞれのカヌーを乗り較べて遊んでいるのが、とても不思議な気分です。

※ナイショだけど、実は浮くかどうか、夜中にこっそりと漕いでみました。生まれて初めての、海上を滑って行く感覚に、とても感動したのを覚えています。でも、後から聞いたら、何人か見て笑っていたようです。(爆)


当初、この材木カヌーは全面、軽トラックの幌仕様でした。
後日、石垣島に出かけた際、看板屋さんで、お店のヒサシに使うビニール生地を購入。
これもトラックの幌と同じように、高耐候性かつ、耐水性パツグンの生地です。
青を1m×2m。…オマケで白を50cm四方ほど。

デッキは全て看板生地に張り替えました。
最初の方に載せた写真は、生地を替えた後のバージョンです。

船内には、沈没防止のために、海岸で拾った発泡スチロールの固まりを船首と船尾に押し込んでヒモで縛っておきました。 これで、万が一浸水しても、船が沈む事は無いでしょう。

コックピット後ろには荷物室も作り(白いカバーの部分)、食料等の買出しは、途中(舗装道路が始まる場所)までこのカヌーで行っていました。
酒瓶などの重い荷物をたくさん積んでも、人が小走りで海岸を歩く程度のスピードが出るので、非常に楽でした。


ところで、強度について。
意外な事に、この「 材木カヌー 」 は、大きな波を被っても、波乗りして毎日遊んでも、一ヶ月くらい、壊れませんでした(期待してた人、ゴメンなさい)。
組み合わせの位置とか、何か偶然が重なって、ある程度の強さになったのかもしれません。
でも、今考えると、ホントに偶然の産物のような気もします‥。

実際、人が乗った状態で船首と船尾を持ち上げても壊れない位、意外な程の強度があったんです。
注:テストは一瞬です。また、骨組みが「材木」なので、耐久性は無いと思います。一ヶ月後、僕は別の地域に移動し、その後はあまり乗っていません。

船底には、下が見えるように窓も付けて、グラスボード仕様にしてみました。

でもこれは、止めておけば良かった。

外洋に出て、真っ黒な海を覗くと、やたら怖かったです。
(懲りずに、次のFRPカヌーでも、窓を付けましたが…)

なお、海岸で引きづっても大丈夫なように、船尾には外側にも材木を付け、船首には幌を縫って持ち手も作りました。
最初に作ったパドルは、ヤザキのイレクターパイプ(組み立て家具用)に、ベニヤ板をネジ止めした簡単なもの。

注:経費の1万ちょっとの中には、オールや各種工具代も入っています。


材木カヌーで長距離遠征


最初の遠征は、西表島の南部、仲間川です。
小さな車輪を縛り付けた 「 材木カヌー 」 を、自転車で引っ張り、仲間川の河口へ。

河口あたりでは広い川ですが、中流あたりからだんだん川幅が狭くなっていきます。
観光船がたくさん通るので、波を受けるとバランスを崩してヒヤヒヤする事も…。

それでも、船上の観光ガイドの案内がタダ聴きできるのに釣られ、頑張って一隻の船を追いかけてみました。

「皆様、右手に見えますのが○○岩です。そして、後ろに見えますのが、カヌーでございます(笑)」

観光客が一斉に振り向いて、カメラを向けてきます。あらら~。

女の子の一人が、僕の手作りTシャツに気づいて「た・び・ん・ちゅ~!」と声をかけてきます。
なんだろう、この恥ずかしさは…(爆)。




次は、西表島南西部の鹿川湾にも行ってみました。
西表島には、半周しか道路が通っていないので、このあたりは人の訪れる事のない秘境です。


キョリ測のサイトで測ってみると、当時暮らしていたテントから、片道10km以上! の海を渡る大冒険(当時の僕にとって)です。
注:少しでも海が荒れると、経験者でも危険な地域ではあります。→詳細はいずれ…。

この時は、みんなが鹿川に行った事を知って、クーラーボックスにビールを積んで、出かけてみました。

「その船で、遠征は無謀だろう!」 さすがに、到着するなり、そう言われましたね。

帰り道は常に両サイドに誰かが付き、大波が立つリーフ突入の際には、いつでも飛び込めるように後ろで待機してくれていました。(…結局、材木カヌーは全然大丈夫でした。)


そして、北海道へ


西表島を出る際、知り合った一人が、餞別だと言ってカヌー用のパドルを一組くれました。
ちゃんとした船なんだから、あり合わせのパドルじゃ、みっともないよ。

「 材木カヌー 」 に不釣り合いなくらいにマトモな、カーボンシャフトのパドルです。 感動を胸に、一路、北海道へ。

この時は、自作キャンピングカー(ハイエース)で全て陸路を北上して行きました。
…沖縄本島→鹿児島→福岡→大阪→新潟→青森→北海道。


2回目の北海道では、当時、一番濃いキャンパー(旅人)たちが集まると言われた、美瑛の「かしわ園」に行ってみました。

と、何人かが出迎えてくれて、車の屋根に積んでいたカヌーについての質問攻めです。
どうやら、誰か有名なカヌーイストと勘違いしている様子。


すぐに誤解は解けましたが、やはり 「 材木カヌー 」 には、みんな興味津々。
そこから、夜の宴会まで話は続き、すぐに何人かとうち解ける事ができました。

ここでのお馬鹿な日々や、北海道での旅のあれこれも、書くともう果てしないのですが、それはまた別の機会に…。


さて、次の冬、再び西表島に渡った僕は、いろいろ勉強して「FRPカヌー」を作ることになります。
と言うわけで、次回からは、今度こそ「本物のカヌー」の作り方編です。

…つづく。

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