アパートを引き払って、5年ほど放浪生活をしていた旅人時代。
当時、西表島の海岸に住んでいた僕は、ふと出かけた石垣島のホームセンターで 「
材木カヌー 」 という、とんでもないアイデアに取り付かれてしまった。 …と、いうのが
前回のお話し。
材木で骨組みを組み立て、軽トラックの幌でカバーをする。
今考えると、無謀なアイデアですが、それを実行してしまった僕の過去は変えられません。
そこで、笑い話のネタとして、公開しちゃいましょう。
注:今回のお話しは、僕は昔、こんなおバカな事をやってしまった‥。と、あえて笑い話風の構成にしています。
素人手作りの船を奨励するものではありませんし、海をなめる事は大変に危険です。
このネタは、参考にしても、決して真似しないでくださいね!
(後日、ちゃんとしたFRPカヌーも造りましたよー。そちらも後で書きますね!)
このカヌー作りの話には、前振りがあります。
当時の僕は、カヌーイストの
野田知佑氏の影響を受けていました。
大好きだった本は『川を下って都会の中へ』(新潮社)。
いつか僕も、カヌーで旅をしてみたい。ずっと、そう思っていたんです。
でも、買うと20万円くらいするカヌーは、旅人の身では、なかなか手がでません。
材木カヌーの構造
ある時、北海道で仲良くなった友人が、自分の折りたたみ式のカヌーを出して、目の前で組み立ててくれた事があります。
その際、じっくりと構造を見ておきました。
意外と華奢(きゃしゃ)なアルミの骨組みでしたが、外側のシートをテコの原理でピンと張ることで、(張力によって)船体の強度を上げる仕組みになっていました。(なるほど!)
それを思い出しながら、アルミを材木に置き換えて、構造を考えてみたんです。
まぁ、失敗しても1万円だし、笑い話にもなるし、いっか!
気軽に考えて、海岸のテント近くの空き地で、いそいそと組み立てを始めました。
まずは船首部分。厚めのベニヤ板に、斜めにカットした材木をネジで取り付けます。
そして、材木をしならせながら、船体のカーブを作り出し、船尾も同じように製作。
いい具合のカーブになるよう、現物合わせで、幅や高さを切り出した材木で固定していきます。
▲左側が当時の僕です。最初のうちは、作っている所を見られるのは恥ずかしいので、こっそり隠れて作業していたんです。
でも、海岸に住むキャンパーたちに発見され、日々、次々と誰かが遊びに来るようになりました。
その海岸にいたのは、何年も旅をして暮らしている古強者ばかりでしたが、みんな僕のカヌー作りには興味津々! 子供のように無邪気に、近くで見物してるんです。
今まで、誰も話しかけて来なかったのに、数日でほとんどの人と知り合いになってしまいました。
(当時は考えもしなかったのですが、こうして僕の工作は、いろいろと自分の生き方に影響を与えているんですねー。)
材木カヌー作り、佳境へ
工作を初めて4日目。カヌー製作は佳境に入りました。
骨組みが完成し、防水と腐食防止を兼ねて材木全てをペンキで塗装。
船体布となる「軽トラックの幌」は、ボンドが付かない材質なので、シリコンコーキングを接着剤がわりに使っています。
先に骨組みにコーキング剤を塗ったら、かぶせた幌を思いっきり引っ張りながら「ガンタッカー」(強力ホチキス)で、バシバシと材木の骨組みに止めて行きます。
座椅子の部分も、同じように作り、背もたれはベニヤ板に発泡スチロールを載せて、同じように幌でくるんでガンタッカーで組み立て。
最後の夕方には、完成が近い事を知ったみんなが、10人ほど集まってきました。
「明日は、進水式だな。酒を用意するか」
そんな言葉を聞いたら、何だか急に不安になって来ました。
この 「 材木カヌー 」 が浮く確証は、まったくありません。
海で漕いだ瞬間、カヌーが折れて沈んだら、どうしよう。 かなり面白すぎますけど…。
…
つづく。