年末の大掃除をしていたら、懐かしい写真が出てきました。
北海道の静内(しずない)。
友人のいた牧場に居候していた時の写真です。
写真って、見た瞬間に、タイムスリップのように記憶がよみがえって来ますね…。
と、いうわけで、またまた僕の昔話。
この頃の僕は、自作のキャンピングカーに住んで、各地を旅しながら、暮らしていました。
が、突然エンジンが壊れて、モーターホームならぬモーターレス・ホームレスになってしまったのです(泣)。
仲間に、「同情するなら金をくれ」と、当時ドラマで流行っていたセリフを言ってみたものの、旅人たちは誰もテレビを見ないので話が通じず、マジに受け取られて、さらに落ち込んだり…。(僕は車で「家無き子」を見ていたので…)
何とか、エンジンを積み替えてくれる業者を見つけ、車の修理が終わるまでの間、北海道・静内の友人の所に居候していました。
ガタガタ音がして、すきま風の入る木造の古い部屋で、晩秋の暗い空を眺めながら「この先、どうなるんだろう」と、ふと不安になったっけ…。
そこは繁殖牧場だったので、メス馬や子馬がたくさんいました。
静内にはそういった牧場が多くて、競走馬の多くも、そこから巣立っていくと聞いた覚えがあります。
子馬は普通、なかなか触れる機会が無いと思うけど、ホントに可愛い生き物です。
(時々、こっそり厩舎に忍び込んでは、手を舐めさせたり、なでなでしてました。)
で、当て馬の話。
血統の良いメス馬たちが暮らす立派な厩舎とは別に、吹きっさらしの柵で囲われた一角に、汚い馬がいました。
何故か一頭だけで、とても気が荒く、常に蹄で地面を蹴ったり、いなないたり、イライラが伝わってくるような態度の、可愛くない馬でした。
牧場の友人に聞くと、「それは当て馬」だよ。との事。
ん? 当て馬って、コトワザじゃないの? と聞く僕に、彼が丁寧に説明してくれたところによると…。
繁殖牧場はメス馬ばかりだけど、それだけでは発情しにくいので、やはり身近にオス馬が必要なのだそうです。
しかし、血統の良いメス馬には、優秀なオス馬をあてがう必要があって、大金を出して種付け用に連れてくるのだと言う。
となると、牧場にいる身近なオス馬は…。
一見彼は、近くにたくさんのメス馬がいるハーレム状態。
盛んに自分をアピールして、オスの匂いをさせ、メス馬がその気になって、盛り上がって来て、いざってところで、彼の役目は終了です!
突然、毛並みの良いタネ馬が颯爽と現れ、目の前で…。
これは悔しい。(男として、辛すぎる)
ストレスであちこち禿げて、たてがみも絡んでアフロになり、性格もすさんで、ますます粗雑に扱われ…。
それでも、あきらめきれず、何度もメス馬にアピールを繰り返しては…。
そう、これが「当て馬」の真実です。
血統や成績の良い馬と、そうでない馬の、この違い。
もしかしてそれは、そのまま人間社会の縮図なのかも…。
と、当時モーターホームレスで居候の身の僕は、悲しげに考えたものです。