← 前回、こんな感じに車載化するぜ…。というイメージ図を掲載したのだけど、作業を始めてすぐに難問にぶつかってしまった。
その問題とは、フレキシブルケーブル。
ネットブックなどの集積度の高い電子機器は、パーツ同士を繋ぐのにフレキシブルケーブルが多用されている。
計画では、工人舎 「 SC3KX06GS 」 の本体からキーボードやタッチパッドを取り外して、別の位置に取り付けたいのだけど、そうすると、なんらかの方法でフレキシブルケーブルを延長しなくてはならない。
ネットで調べると、フレキシブルケーブルを修理するために半田付けにチャレンジした記事がいくつか見つかったものの、延長に関しての情報は無し。
ハンダ付けもかなり難しそうで、僕のスキルで何とかなるのかなぁ。
…とりあえず、ネットで 「 SC3KX06GS 」 の分解方法を調べて、バラして行く。
最初に手に取ったのが、キーボードのフレキシブルケーブル。
妙に薄いフィルムだな。と思いながらも、端子部分を800番の耐水ペーパーでこすってみる。
半田付けできるか調べるためだ。
ところが、3こすり程度でふと見ると、削れて電極が無くなってしまった!
うわっ、なんてこったい!!
てっきり、中に銅箔があると思っていたのに、塗装か蒸着でフィルム上に導電性の膜を作ってある構造だった。
これでは半田付けなんか不可能じゃん。
え~っと…。もしかして今の3こすりで、ゲーム終了? 4万円がパー!?
最初から、この失敗は痛い。というか、ネットブックの車載化を公言しておきながら、いきなり自爆?
とりあえず、作業をあきらめて、お酒の水割りを作る。僕は沖縄在住だから、泡盛だ。
1杯、2杯…。ショックはでかい。
そのうち、一人で愚痴り始める。
「だいたい、フレキシブルケーブルがフレキシブルケーブルだから、いけないんだよー」
酔っぱらいの理屈だ。
でも、待てよ! 自分の愚痴で、何かひらめいた気がする。
意外と「フレキシブルケーブルが別のもの」だったら何とかなるんじゃない?
何か他の物に形状を変換するとか…。
考えていたら、答えは目の前にあった。
それは、パソコンの基板に付いているフレキシブルケーブルのコネクター。
金属の電極をケーブルに押し当てて、電気的に接続する仕組みのパーツだ。
何らかの方法で、同じようにフレキシブルケーブルに電極を接続できれば、さっきの失敗を取り返せるに違いない。
そして思いついたのが、プリント基板。
電子工作のマニア向けに売られている「ポジ感光基板」という製品を使うと、好きなパターンでオリジナルの基板を作ることができる。
試しに1枚、キーボードのフレキシブルケーブルのパターンと同じ寸法でプリント基板を作って貼り合わせてみる。
▲左:作った基板にIDEケーブルをハンダ付け 右:クリップで圧着させると導通する
実験してみると、導通あり!
何とかリカバリーできそうだ。
…だいぶ前置きが長くなったけど、今回は「ポジ感光基板」を使っての、フレキシブルケーブルの延長のお話しです。
■フレキシブルケーブルの延長方法についての考察
まずは、「フレキシブルケーブル 延長」等のキーワードでGoogle検索してみた。
しかし、情報がまるで見つからない。
これは、自分なりに考えるしか無いみたい…。
それでも収穫だったのは、オリジナルのフレキシブル基板を作れる「フレキシブル・ポジ感光基板」という商品があるのを知った事。昔、電子工作をしてたので、これは使えそうだと直感。
この商品を使って、長いフレキシブルケーブルを自作してしまえば話は簡単そうだけど、経験上、さすがにそれは難しい気がする。
ショート(短絡)や劣化による断線などの不安があるし、長い物だとコスト的にも割に合わなそうだ。なにより、長いケーブルをエッチングする容器はどうしたらいいんだ?
そこで、フレキシブル・ポジ感光基板を使って、両端部分のみ配線の間隔を広げるための基板を作り、中間部分は別の銅線を使う構造を考えてみた。
なんだか遠回りな気もするけど、強度や構造的には、これが確実。
使う銅線は、ハードディスク用のIDEケーブルをバラして使用する。本来が高速信号用なので、少しぐらいの長さでも誤作動は少ないハズ。
IDEケーブル40芯タイプのピッチは1.25mm。このくらいの間隔なら、僕のスキルでも半田付けできそうだ。
ちなみに、ノーマルのフレキシブルケーブルを実測してみると、タッチパネルは0.5mmピッチ。キーボードは1mmピッチ。何らかの基準があるようだ。
さっそく、フレキシブル・ポジ感光基板をネットで注文。でも、フレキシブル・タイプはあまり需要が無いようで、取り寄せで10日ほどかかってしまった。このブログの更新が遅れた理由の一つ…。
ポジ感光基板の作り方は、
別のページに詳しく書いておきますが、パソコンを使って割と精密なモノが作れます。
…で、完成した基板を使って、実際に工人舎 「 SC3KX06GS 」 のケーブル延長をしてみた。
■銅線の半田付け
▲左:グッドウィルのジャンクで50円なり。 右:80芯は2本づつ縒っていく。
銅線はIDEケーブルを必要な分だけ切って使用。
IDEケーブルには、40芯と80芯の2種類があって、80芯の方が柔らかくて曲げやすいものの皮膜を剥きにくい。
カッターでビニールのカバーにわずかな切り込みを入れてから剥くのだけど、中の芯がすぐに切れてしまうんだ。
皮膜を剥くのが簡単なのは40芯タイプ。
ちなみに、キーボードは24芯、タッチパッドは26芯の幅が必要だった(40芯換算)。
プリント基板のパターンからはみ出さないように、ケーブルの芯を少し縒ってから、半田付け。
パターンの面積がとても小さいので、ハンダは一瞬で溶けてくっついていく。
時々コテ先を拭きながら、手際よく作業。
▲左:裏からプラ板で補強。右:端子部分の厚みは0.3mm。
無理な力がかかるとパターンが切れてしまうので、つなぎ目の部分は裏からプラ板を両面テープで貼って補強しておく。
コネクターと接する端子部分の厚みは、補強のプラ板を含めて、ノーマルが約0.3mm。
適当なプラ板を探して(何かのケースを使用)、両面テープでケーブルの裏に貼り付け、0.3mmに近づける。
左右はハサミでカット。
■ケーブル取り付け
▲左:テスターで導通チェック。右:工人舎 「 SC3KX06GS 」 のタッチパッド部分を切り離す。
いよいよ、自作の延長ケーブルの取り付け。コネクターに差し込み、基板の端子とケーブル上のパターンの導通をチェック。
大丈夫そうだ。
そして、もったいないけど、工人舎 「 SC3KX06GS 」 の外装パーツからタッチバッド部分を切り離す。
もう、後戻りはできない。
▲左:配線もIDEケーブルを使って延長しておく。右:自作ケーブルを差した所。
一応、イメージ通りにフレキシブルケーブルの延長に成功。
■そして再起動
実は、ちゃんと起動できるまで、2回ほどケーブルを作り直した。いつの間にか断線してたり、パターンの左右を間違えてたり…。
なので、普通に電源ボタンが機能して、HDアクセスランプを明滅させながらウインドーズが起動していき、タッチバッドでカーソルが動くさまを確認できたときには、思わずガッツポーズをしてしまった。キター!!
…と、言うわけで次回は、1DINサイズのケース作りに進む予定。
そろそろ形が見えてくるかな?
超小型PCの車載化-その1 「 工人舎 SC3KX06GS を衝動買い」
超小型PCの車載化-その2 「 SC3KX06GS のレビュー」
超小型PCの車載化-その3 「 ホンダS-MXへの取り付け場所」
→ 超小型PCの車載化-その4 「フレキシブルケーブルの延長」
(このシリーズ、リアルで現在進行形の作業記録だったりします。でも、面倒なモノほど、気分が乗らないと取りかからないので、次はいつになるのやら…)