2009年06月15日
ポジ感光基板 制作マニュアル
別ページ、超小型PCの車載化-その4_「フレキシブルケーブルの延長」 の文章があまりに長かったので、「ポジ感光基板の作り方」の部分をこちらに分轄して、両方とも少し手直ししました。
最初に、ポジ感光基板の解説。
ポジ感光基板とは?
電子回路の自作用に、光(紫外線)に反応する薬品を電子工作用の基板に塗った商品。サンハヤトというメーカーから発売されている。
ベースの板がベーク板やガラスエポキシなど、種類や寸法が何種類かあって、中にはフレキシブル基板を作れるタイプもある。
薬品が塗られた面に、黒色(光を通さない)で回路図を描き、光を当てた後に薬品で処理する事によって、好きなパターンの基板を作ることが可能。
⇒ ポジ感光基板はAmazon
で1,000円ちょっと
ポジ感光基板の制作マニュアル
※今回はフレキシブル基板タイプを使用。これは、折り曲げ可能なフィルムタイプの基板で、普通の基板と同じようにハンダ付けも行える。フレキシブルケーブルの修理や置き換えにも使用可能。
以下、制作の覚え書きです。
回路図の作成
イラストレーターというソフトで、必要なパターンを描いていく。(電子工作が趣味の人は、回路図作成用の専用ソフトを使うらしい)
または、コインとかで擦ると基本的なパターンが転写できるシートを使う方法もあり。
今回のパターンは、超小型PCの車載化-その4_「フレキシブルケーブルの延長」 用なので、あまり電子回路っぽくないかも…。
ところで、実際のパーツに合わせた正確なサイズが必要な場合用に、僕は方眼紙のマスを書いたイラストレーター書類を作ってある。自宅のプリンターで出力すると、1mmのマスが正確に1mmでプリントできる基準用紙だ。→ grid.pdf (僕の自宅環境用です。…イラストレーターで編集可能)
この方眼紙の上に線を引いて、半田付け用の楕円のパターンと繋いで行く。…なかなか地道な作業だ。
線が曲がる場所は、「クリッピングマスク」という方法でそれぞれの線の一部を見えなくしたりと、いろいろ細かいテクニックを使っていたりします。
何度も作り直して、結構、時間がかかった力作。
データはこちら。→ pattern.pdf (イラストレーターで編集可能)
パターンの出力
ネットなどで調べると、回路をOHPシートに出力すると書いてあるけど、OHPシートは沖縄では(取り寄せでしか)入手できない。
だいぶ以前から、大勢の前で発表やプレゼンする際はパワーポイントを使うのがスタンダードだから、OHPはもはや過去の物なのだろう。
▲年賀状の残りで試し印刷(後で交換予定)。
そこで、今回は透明ラベルを使って出力してみた。
作りたいパターンは最小0.5mmピッチと精密さが要求されるので、左右反転印刷をして、パターンの印刷面とポジ感光基板が密着するように工夫する
出力したラベルは、2mmのアクリル板に気泡が入らないように貼り付けておく。
念のため表面のインクをドライヤーで1分ほど乾かして、ポジ感光基板の薬品面が張り付いて剥がれないように鼻の油を塗っておく。これもコツの一つ(笑)。
ポジ感光基板を露光
基板は大きめのサイズを買って、切って使うと安上がり。(必ず何度か失敗する)
冷蔵庫に入れておくと、開封後も数ヶ月は大丈夫。
基板を切る際は、部屋を薄暗くして、手早く。もちろん、指先はキレイに洗っておく。
薬品が塗られた側(銅箔面)をカッターで2~3回切り、反対側からもプラ板用カッターで数回削ってから折る。
で、さっきの透明ラベルを貼ったアクリル板を載せる。
反対側からもアクリル板で挟み、動かないようにクリップで固定。
サンハヤトの説明書によると、露光は15cmの距離から蛍光灯で照らして30分。(僕の卓上蛍光灯では40分がベスト)
深みのあるグリーンから、露光が進むに従って褪せた茶色っぽくなっていく。
この色の変化の感覚を覚えておくと、太陽光で数分という短時間で露光ができる。
(沖縄の太陽だと、熱で黒インク部分に気泡が発生する事もあって、あまりお勧めで無いかも…)
ポジ感光基板の現像
現像とか言うと写真のようだけど、実はポジ感光基板作成の原理は写真と一緒。
指定の現像用薬品をぬるま湯に溶いてから基板を漬けると、光を当てた部分からユラユラと紫色の色素が溶け出してくる。
指定の時間(30秒程度)が過ぎるのを待って、基板のベースの銅箔が露出したら、薬品から出す。
さらに指の腹で表面を擦って、銅が完全に露出して、ピカピカ見えるようにしておく。
ピカピカしてない箇所があったら、再び薬品に漬け直す。
ちなみに、ポジ感光基板に塗布された薬品の厚みには、かなりばらつきがあるようで、基板の中心部と端の部分で露光や現像の進み方が違う。
…指で擦る事によって、光と現像液で劣化した薬品を落とすことができるみたい。
何回か失敗して得たコツだ。
終わったら、中性洗剤で基板を良く洗っておく。
エッチング
これまでの作業で、基板の表面に銅が露出した部分と、まだ皮膜で保護された部分が残っている状態ができている。
念のため、ルーペでチェックして、皮膜が取れているところがあったら油性マジックペンで補修しておく。
エッチングは、露出した銅の部分のみを薬品で溶かす作業。使うエッチング液は劇薬だ。
湯煎(ゆせん)で40~45℃にしたエッチング液に基板を入れ、割り箸などで揺すりながら銅を溶かしていく。
ちなみに、100均で買った揚げ物用温度計を使ってみたけど、エッチング液に浸かったセンサー部分はツヤが無くなってしまった。この液はステンレスも溶かすみたい。
温度については、40℃では反応が遅く、いつまでたっても銅は溶けない感じ。
試しに50℃以上にするとみるみる溶けて行くけど、蒸発した薬品は身体に相当悪そうで、精神的に良くない(肉体的にか?)。
さて、溶かしたい部分の銅が全部消えて、ツヤの無い茶色のベース部分が露出したら完成。
ここでも、基板を中性洗剤で良く洗って、溶かし残しが無いかチェック。
エッチング液は冷めたら容器に戻して、数回は再利用できる。
なお、古くなったエッチング液を最終的に処分する際は、エッチング液に付属の数種類の薬品で中和した上でセメントで固めて燃えないゴミにする手間がかかる。かなり面倒くさいけど、これは工作をする個々人のマナー。(処理中、化学反応でかなり熱が発生するため、ビニール袋を水で冷やしながら作業する必要有り)
…そんな劇薬を、処理の事まで対処して工作好きな人のために流通させているサンハヤトというメーカーの姿勢に感謝
洗浄・修正 → 完成!
エッチングで銅を溶かした基板には、まだ感光剤が付着している。
これは100均で手に入るシール剥がしスプレーで簡単に落とせる。(パーツクリーナーやブレーキクリーナーでもOK)
シール剥がしをスプレーして、少し待ってからテッシュで拭くと、自作したパターンがキラキラと現れて来る。感動の一瞬だ。
テスターで隣り合った配線をチェックすると、何カ所か短絡していた。ダイヤモンドヤスリで刃を鈍らせたカッターの先で(押しながら)削って、修正。
(基板の上に、ホコリが入ってたみたい)
こんな、慣れた人から見たら簡単な工作でも、自分で作って成功すると、結構うれしかったりする…。
パソコンでプログラムを作ったり動かしたりは、何度でもやり直しが効くけど、現実世界の工作は一発勝負。リロードもできないしね。

▲完成した基板。
今回はフレキシブルタイプを使ったけど、通常のポジ感光基板も作り方はまったく一緒。
ユニバーサル基板(万能基板)でもいろいろな工作が出来るけど、ポジ感光基板はさらに精密な基板が作れるので、お勧めです。
最初に、ポジ感光基板の解説。
ポジ感光基板とは?
電子回路の自作用に、光(紫外線)に反応する薬品を電子工作用の基板に塗った商品。サンハヤトというメーカーから発売されている。
ベースの板がベーク板やガラスエポキシなど、種類や寸法が何種類かあって、中にはフレキシブル基板を作れるタイプもある。
薬品が塗られた面に、黒色(光を通さない)で回路図を描き、光を当てた後に薬品で処理する事によって、好きなパターンの基板を作ることが可能。
⇒ ポジ感光基板はAmazon
ポジ感光基板の制作マニュアル
※今回はフレキシブル基板タイプを使用。これは、折り曲げ可能なフィルムタイプの基板で、普通の基板と同じようにハンダ付けも行える。フレキシブルケーブルの修理や置き換えにも使用可能。
以下、制作の覚え書きです。
回路図の作成

または、コインとかで擦ると基本的なパターンが転写できるシートを使う方法もあり。
今回のパターンは、超小型PCの車載化-その4_「フレキシブルケーブルの延長」 用なので、あまり電子回路っぽくないかも…。
ところで、実際のパーツに合わせた正確なサイズが必要な場合用に、僕は方眼紙のマスを書いたイラストレーター書類を作ってある。自宅のプリンターで出力すると、1mmのマスが正確に1mmでプリントできる基準用紙だ。→ grid.pdf (僕の自宅環境用です。…イラストレーターで編集可能)
この方眼紙の上に線を引いて、半田付け用の楕円のパターンと繋いで行く。…なかなか地道な作業だ。
線が曲がる場所は、「クリッピングマスク」という方法でそれぞれの線の一部を見えなくしたりと、いろいろ細かいテクニックを使っていたりします。
何度も作り直して、結構、時間がかかった力作。
データはこちら。→ pattern.pdf (イラストレーターで編集可能)
パターンの出力

だいぶ以前から、大勢の前で発表やプレゼンする際はパワーポイントを使うのがスタンダードだから、OHPはもはや過去の物なのだろう。
▲年賀状の残りで試し印刷(後で交換予定)。

作りたいパターンは最小0.5mmピッチと精密さが要求されるので、左右反転印刷をして、パターンの印刷面とポジ感光基板が密着するように工夫する
出力したラベルは、2mmのアクリル板に気泡が入らないように貼り付けておく。
念のため表面のインクをドライヤーで1分ほど乾かして、ポジ感光基板の薬品面が張り付いて剥がれないように鼻の油を塗っておく。これもコツの一つ(笑)。
ポジ感光基板を露光
基板は大きめのサイズを買って、切って使うと安上がり。(必ず何度か失敗する)
冷蔵庫に入れておくと、開封後も数ヶ月は大丈夫。
基板を切る際は、部屋を薄暗くして、手早く。もちろん、指先はキレイに洗っておく。
薬品が塗られた側(銅箔面)をカッターで2~3回切り、反対側からもプラ板用カッターで数回削ってから折る。

反対側からもアクリル板で挟み、動かないようにクリップで固定。


この色の変化の感覚を覚えておくと、太陽光で数分という短時間で露光ができる。
(沖縄の太陽だと、熱で黒インク部分に気泡が発生する事もあって、あまりお勧めで無いかも…)
ポジ感光基板の現像
現像とか言うと写真のようだけど、実はポジ感光基板作成の原理は写真と一緒。

指定の時間(30秒程度)が過ぎるのを待って、基板のベースの銅箔が露出したら、薬品から出す。
さらに指の腹で表面を擦って、銅が完全に露出して、ピカピカ見えるようにしておく。
ピカピカしてない箇所があったら、再び薬品に漬け直す。
ちなみに、ポジ感光基板に塗布された薬品の厚みには、かなりばらつきがあるようで、基板の中心部と端の部分で露光や現像の進み方が違う。
…指で擦る事によって、光と現像液で劣化した薬品を落とすことができるみたい。
何回か失敗して得たコツだ。
終わったら、中性洗剤で基板を良く洗っておく。
エッチング
これまでの作業で、基板の表面に銅が露出した部分と、まだ皮膜で保護された部分が残っている状態ができている。


湯煎(ゆせん)で40~45℃にしたエッチング液に基板を入れ、割り箸などで揺すりながら銅を溶かしていく。
ちなみに、100均で買った揚げ物用温度計を使ってみたけど、エッチング液に浸かったセンサー部分はツヤが無くなってしまった。この液はステンレスも溶かすみたい。
温度については、40℃では反応が遅く、いつまでたっても銅は溶けない感じ。
試しに50℃以上にするとみるみる溶けて行くけど、蒸発した薬品は身体に相当悪そうで、精神的に良くない(肉体的にか?)。
さて、溶かしたい部分の銅が全部消えて、ツヤの無い茶色のベース部分が露出したら完成。
ここでも、基板を中性洗剤で良く洗って、溶かし残しが無いかチェック。
エッチング液は冷めたら容器に戻して、数回は再利用できる。

…そんな劇薬を、処理の事まで対処して工作好きな人のために流通させているサンハヤトというメーカーの姿勢に感謝
洗浄・修正 → 完成!
エッチングで銅を溶かした基板には、まだ感光剤が付着している。



(基板の上に、ホコリが入ってたみたい)
こんな、慣れた人から見たら簡単な工作でも、自分で作って成功すると、結構うれしかったりする…。
パソコンでプログラムを作ったり動かしたりは、何度でもやり直しが効くけど、現実世界の工作は一発勝負。リロードもできないしね。

▲完成した基板。
今回はフレキシブルタイプを使ったけど、通常のポジ感光基板も作り方はまったく一緒。
ユニバーサル基板(万能基板)でもいろいろな工作が出来るけど、ポジ感光基板はさらに精密な基板が作れるので、お勧めです。
Posted by IGU at 12:48│Comments(2)
│加工方法
この記事へのコメント
久々に感光プリント基板の情報を読みました。
最近自作プリント基板を作るのが面倒で、ご無沙汰していました。
でもこの記事を読み、また自作基板を作ろうと言う気になりました。
感謝!!
最近自作プリント基板を作るのが面倒で、ご無沙汰していました。
でもこの記事を読み、また自作基板を作ろうと言う気になりました。
感謝!!
Posted by pc_net_sp at 2010年11月13日 22:17
あなたは、天才。私も同じPCで車載用にしたいと、思っていたのですがケーブル延長なんて、とても出来るとは思えませんので泣く泣く断念致します。凄い技術ですね。神です。
psいつか挑戦したいなー。
psいつか挑戦したいなー。
Posted by utina-ntyu at 2011年02月10日 12:40
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