誰が考えたか、
市販の洗剤サンポールで、金属をメッキしちゃおう!
‥という、すごい裏技があります
かなり以前の個人ホームページ等で、作業風景を公開している人が、何人かいます。
趣味にも仕事にも使えそうなので、僕も自宅で、いろいろサンポールメッキの実験をしてみました。
結論から言うと、コツは要りますが、家庭でカンタンに小物のメッキ作業が可能です。
試した素材は、
銅、錫(スズ)、亜鉛、ニッケルの4種類。
今回から、7回の予定で、その実験のレポートを連載して行きます。
⇒ 1,
サンポールメッキの準備/予備実験
2,
廃液処理についての考察
3,
銅めっき編
4,
亜鉛めっき編
5,
錫(スズ)めっき編
6,ニッケルめっき編
7,サンポールメッキのまとめ
材料/道具を準備
まずは、タイトルの、サンポール‥。
この裏ワザは、トイレ洗剤の商品名を取って、
サンポールメッキと呼ばれます。
おそらく、最初に考えた人がサンポールを使ったからでしょう。
でも一般的(?)には、同種の洗剤「
ナイス」という商品を使う人が多いようです。
「ナイス」の方が安くて、液が透明で使い勝手も良いみたい。 僕も、そちらを用意しました。
(ナイスは100均ダイソーで売ってます。ちなみに、サンポールはキンチョウで、ナイスはフマキラーの商品名)
※トイレ洗剤メッキ‥というのも響きが悪いので、以下、サンポールメッキで統一しますね。
電源は、乾電池でも大丈夫ですが、今回は実験用電源を使いました。
かなり昔に作った、1.2~13ボルトに電圧を可変できる、ごく簡単な回路です。
←
必要になって、有り合わせで作った電源。 オーディオメーターを電圧計にしたり、適当な工作です。
※電圧可変は、LM317を使用。 今回の実験では、主に電流量でコントロールしています。なので新たに準備するなら定電流回路の方が向いてると思います。
他に、同じくダイソーで、ワニグチ・クリップ。 あとはペットボトルと割り箸、キッチンスケール、ステンレスの針金等。
メッキ液の準備
めっき液は、トイレ洗剤を希釈して作ります。
(この洗剤、実は塩酸9.5%が主成分です)
液の濃さは、ネットの各記事を参考にしました。 (おそらく)最初の人が設定した、5倍希釈が標準のようです。
5倍希釈というと、次のような比率。
洗剤30cc : 水120cc (1:4)
これで、だいたい問題なく各種メッキが可能です。
(ニッケルメッキのみ、後で比率を変更しました)
金属板を用意
▲
左:スプレーの空き缶をハサミで分解。 / 右:サンダーで塗装面を研磨。
メッキされる側の金属は、空き缶を分解した鉄板と、新品の0.3mm厚の銅板/真鍮板を準備しました。
実験なので、全て4×5センチのサイズに統一。
個体差による違いが出にくいようにしています。
参考記事:
アルミ板の切り方
配線のつなぎ方
金属板に電気を流すのに、ダイソーで買ったワニグチ・クリップを使いました。
腐食されにくい、ステンレスの針金を配線代わりに使ってます。
(ステンレス用フラックスを付けると、簡単にハンダ付け可能)
後で間違えないよう、プラスは赤、マイナスは黒で、色分けしておきます。
電源は、次のように繋ぎます。
マイナス極:製品 (めっきを、かけたい対象)
プラス極 :材料 (めっき液に、溶かす金属)
電圧は、今回のような小さい金属板だと、乾電池1個~2個直列程度で十分です。
泡の出方を見ながら、1.5ボルトか、3ボルトか、調整します。
なお、吊るす長さも、プラス側は液に触れないよう短めに配線。
プラスのワニグチ・クリップが液に触れていると、金属が溶けてメッキの材料に混じってしまいます。
素材の洗浄について
メッキに油分は禁物で、ちょっとでも指の油等が付くと、その部分はメッキが弾かれてしまいます。
そのため、通常のメッキ工程だと、念入りに電解脱脂等を行うのですが、今回はカンタンに業務用洗剤を使いました。
これは、普段の作業中、手についた油汚れを落とすのに重宝している洗剤。 (スクラブ入り)
金属板を紙やすりやコンパウンドで磨いた
直後に、この洗剤でこすり洗いして、
濡れたままメッキにかけています。
予備実験
詳しい方法は、それぞれの素材編で紹介しますが、まずは予備実験の話から。
最初に、鉄に銅をメッキできる事を確認してみました。
次に、銅の上に、亜鉛をメッキ。これもOK。
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写真:上側は、メッキに使った金属。 下は、メッキをかけた製品。
サンポールめっき、なかなかです。
さて、僕が確認したかったのは、どの程度の電流を流せば良いのか? という点。
そこで、電圧を変えながら、電流とめっきの仕上がり具合をチェックしていきます。
ベースは、銅板。その上に、亜鉛をメッキして、調査。
1回目 : 300~350mA 1.5時間
2回目 : 1.5A 30分
3回目 : 60mA 7時間
4回目 : 150mA 3時間
5回目 : 300mA 1.5時間 (1回目の再確認、液の質の変化をチェック)
なるべく、時間×電流の和が近くなるように調整しています。
実験の結果、あまり大電流を流すと、表面が線状に荒れてしまう事が判りました。
水素の泡が上がっていく際に、道のような感じで水が押しのけられる事が原因に見えます。
←
写真 左から、③:60mA×7時間、①:300mA×1.5時間、②:1.5A×30分。
ということは、電流は、なるべく弱い方が良さそうです。
ちなみに、銅に亜鉛をメッキする際、1.2ボルトの電圧/今回の金属片のサイズで、100mA程度の電流が流れてました。
メッキの仕上がりについて
詳しくは、次回以降に、書いて行きます。
チラッと紹介しておくと、こんな感じです。
左から
、銅メッキ、亜鉛メッキ、錫メッキ、ニッケルメッキ
どうです? みんなキラキラと、輝いているでしょう!
次回、避けて通れないメッキ廃液の話を入れ、3話からは実際のメッキ手法について書いていきます。